キュカの両親は人間の学者。
子供よりも自分の研究を優先させるようなところはあったけど、
優しいときもあるし、どちらかと言えば2人のことは好きだった。
キュカが12歳の時に、研究の一環でトゥラーブ砂漠の遺跡を訪ねる。
そこで素晴らしい発見をしたことで、両親は目を輝かせて遺跡に夢中になった。
太古の王女の墓を荒し、触れてはならぬ物にまで手を出してしまった。
それにより、怨霊の祟りを受け両親は死亡。遺跡は崩れて砂の中に消えた。
キュカもその事故に巻き込まれたが、奇跡的に一命を取り留める。
その際にそれまでの記憶を失ってしまう。もちろん両親との思い出も。
だから、両親の死に対する悲しさは全くなかった。
記憶を失ったものの、別段不安や不便はなかった。
幸運にも親切な人に保護され、生活に苦しむこともほとんどなかった。
のらりくらりと生きる中で、唯一執着したのが「宝石」。
自分でも理由はよく分からなかったが、非常に興味が湧いた。
宝石に関することなら調べたり勉強したりすることも全く苦ではない。
次第に「世界中のあらゆる宝石を自分のモノにしたい」と望むようになる。
トレジャーハンターを志すのも自然な流れといえた。
しかしながらどんなに珍しい宝石も、美しい宝石も、しばらく経つと飽きた。
手放すのも惜しくないから、そのたびに高値で売り払う。
簡単に手に入らない物のほうが燃えるらしい。それは自覚するように。
ある日、情報屋から「宝石族」についての話を聞いた。
なぜか胸がざわついた。初めて宝石を目にし、その美しさに魅入られたあの時と似ている。
その後、シャルドネちゃんと出会う。
始めは宝石族と知らなかったけど、爪か、血が宝石になるところを見たとか?
で、「これが宝石族かー!!」うおおおお ってなる。
奇襲かける→反撃される、逃げられる→なかなか手に入らない、何これ燃える!!
すっかり虜になって追いかけっこはじまりはじまり~^^
その一方で、初めてシャルドネちゃんと会った日から、たびたび頭痛を感じることがあった。
さらに夢見も悪い。
と、昔の記憶がフラッシュバックする現象が発生。
で、なんだろう…シャルドネちゃんと2人で行動して、庇ったときにお礼言われて?とか?
その時に、こう、突風が吹いてくるような…忘れてたものが一気に蘇った。
自分が砂漠の王女のお気に入りの魔物(厳密には普通の人には見えない悪魔的な精霊)で、
さらに生前は宝石族系のオウムだったこと。
ゲネアの岩山の民の壊滅をこの目で見、力になれなかった無念から怨霊化(↑の精霊がそれ)したこと。
(その際に宝石に取り憑いていた。それが砂漠に運ばれ、宝石の封印を王女が解いた)
記憶はなかったけど、使える魔術とか自分の非情さだとかで、「人間じゃないな」とは思ってた。
だからそこまで驚きはなかったし、やっぱりそれを懐かしんだり悲しんだりもなかった。
自分が取り憑いた人間が死んだってのもこれではっきりしたわけだけど、今更それが何よ?
もやっとしていたものが晴れただけで、その事実が精神やらに大きな影響をもたらすかと言えば、
そうじゃないっていう。
あと、シャルドネちゃんに惹かれてた要因の一つはこれだったんだなぁと判明。
王女と顔が似てるのだ。性格は真逆ってくらい違うから苦笑したけど。
その王女は愚かだった。宝石に魅せられ、固執し、全てを投げ打って、無残な最期を遂げた。
思えばわずかながら王女に恋慕を寄せていて、自分が彼女を悲劇的な末路へ追い込んだことに愉悦を感じてて。
破滅したその女の亡骸と共にあろうと、同じ棺で眠っていたのだ。
それを人間なんかに邪魔されて、気が立って、殺した。
人間の体に閉じ込められたのは事故だったけど。まあ、なっちゃったものはしょうがない。
って感じに自分の回想に浸ってから、とくに気にせず、顔にもほぼ出ず。
シャルドネちゃんから歴史を集めてることを聞く。
「たった今発覚した事実がそれじゃね?」って、ここで初めてちょっと動揺した。
宝石に踊らされて破滅した女と同じ顔で、とうに諦めた自分と同じ夢を語る宝石族の女。
彼女なら出来るんじゃないかって、らしくもなく明るい希望を抱いちゃったりね…
「君と未来を見たくなった」的な…的な…(くせぇ…
でも一方で無性に暴力的な衝動に駆られることもある。ぐちゃぐちゃにしてやりたい。
(元が獣の魔物だし)
自分の知ってることを小出し小出しで話しながら、彼女との縁が切れないように画策してるのが現在~これから、かな。
あと精神が人間じゃないのに、この体が使えなくなったらどうなるのか、とか思うところはあるけど、
どうなってもその時はその時、なるようになるさ。
キュカって基本的にこの考えなんだろうな~。なるようになるさ主義。