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それなりに長さのある文章置場。 企画っ子とか自宅学生とか自宅っ子とか…とにかく入り乱れで妄想を書き散らかしてます。 よそ様のお子さんをお借りすることもあります。その時は親御さんの名前を明記いたします。
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10.「好き?」「好き」「愛してる?」

心理描写は水穂寄りです。結構珍しい気がする…?
朴念仁がんばる。

直ちゃん(@芽衣さん)、リオくん(@やまこ。さん)、織江ちゃん(@DxFさん)
お子さんお借りしました!書かせていただきありがとうございます!








「わたしのこと好き?」

心配性な恋人から愛情確認のためにこんな問いかけをされることは、一度ならずたびたびある。
水穂はこれを疎ましく思ったことはない。正直に答えればいいだけのこと。大した手間ではない。

だがこの質問はだけはどうしても苦手だった。

「わたしと水泳どっちが大事なの?」

どちらも大切だ。正直に答えたらへそを曲げられた。
黙り込んだ。もういい!怒って通話を切られてしまった。
かけ直してもつながらない。面倒になって、いつもそこで布団にもぐって寝てしまう。


ルームメイトのリオと、最近彼女とどんな話をしたかの話題になり、水穂は最後に直と話した時のことを思い出していた。
一週間前までの記憶を遡って、なんの会話も頭に浮上してこないことに小首を傾げる。

「二週間ぐらい話してない」

ぽつりとつぶやくと、リオはぎょっと目を丸くした。
「ウソだろ!?!?!」
オーバーリアクションの友人に、胸倉を掴まれゆさゆさ揺らされる。気持ち悪い。やめてほしい。
「ちょっと…」

「お前なあぁぁぁ!!今度は何したんだよっ!!」
さらにガクガクと揺さぶられる。いや、だからやめてほしい。自分の希望がちっとも通らない。
「何もしてない。…………と、思う」

その返事を聞いたリオは、深い深いため息を吐き出した後、むしろそれかもな、と頭を抱えた。
「お前んとこの兄弟ってほんと極端だもんな」

はて、なぜ突然弟の話に?
首をさらに傾げると、もうほとんど耳が肩につきそうになる。

水穂の一つ年下の弟は、UMAに通う非常に元気で騒がしい、台風の目のような性格をしている。
リオ以上のオーバーリアクションの持ち主であり、恋心を寄せる幼馴染に一途にストーカー行為と熱烈な愛情表現を続けてきた。ゴリ押しが功を奏していまや両想いである。

「弟くんと違ってさ、お前は足りなさすぎるんだよ。もっと言葉や行動にしたほうがいいんじゃないか?彼女不安になるだろ」

そう説明されて、鈍い水穂もようやっと理解できた。
言われてみれば思い当たる節が、一つ、二つ……いや、五つくらい?それ以上あったかもしれない。

直はよく、自分のことが好きかと聞いてくる。
「わたしのこと、好き?」
「ああ」
「愛してる?」
「ああ」
なぜかその後、通話を切られてしまったことがあって、水穂は携帯電話の前で首を傾げたのだ。何か粗相をしただろうか。正直に答えたというのに。

その話をリオにしたら、彼は顔を真っ青にさせた。本当によく表情が変わる。

「あーー……お前さ、それで自分の気持ち伝えられてるって本当に思ってんの?」
水穂は頷いた。
「そっか…そうだな、お前ってそういうヤツだよな」
独り言らしい。顎に手を当ててうんうんと一人で納得している。水穂にはさっぱりだが。

「俺が今から有り難い話をするから、よーく聞いてくれ。いいな?」
がっしりと肩を掴む力の強さに、これは大人しく従うのが無難だ、と珍しく空気を読んだ水穂は首を縦に振った。


「いいか、『好き?』に対しての肯定の返事は『好き』。それだけだ。間違っても『ああ』じゃない。」

水穂は目を瞠った。まずい。導入からリオの日本語が理解できかねる。
無反応を貫いていると、リオも察したらしい。

「お前は『ああ』って言って気持ち伝えた気になってるんだろ?だけどな、直ちゃんにとっては違うんだよ。『ああ』はイコール『どうでもいい』。『好き』じゃなくてな」

それは違う、そんなことはない、と言いかけて、リオの真っ直ぐな視線に射すくめられて言葉が出なくなる。

彼の言葉を借りて、件の会話を脳内で再生してみた。
「わたしのこと、好き?」
「どうでもいい」
「愛してる?」
「どうでもいい」
通話を切られるわけである。
彼女から二週間もの間拒絶されたとしても、それは仕方のない事態なのかもしれない。

「このままじゃついに愛想尽かされて、果ては別れを切り出されるぞ」

リオのその脅し文句は水穂の胸の奥まった部分をジジっと焼いた。



水穂はジャージ姿でバス停の前に立っていた。

その日は代表選考を兼ねた、高校生活の集大成とも言える大事な競泳の大会があった。
試合があれば直が応援に来てくれることもあったが、この日ばかりは期待できないだろう。モチベーションが下がらないと言えば嘘になるが、その程度で揺らぐようなやわな練習を積んできたわけではない。
自分を信じろ。実力を出し切ればいい。簡単なことだ。

「水穂ーー!!ファイッファイッ!!」

耳慣れたよく通る声に振り向く。
弟の潜菜と、握られた手を恥ずかしそうに隠そうとする織江の姿が目に入る。
どうやら見送りに来てくれたらしい。人前だろうが気にせず手をつなぐあたり、潜菜らしい。
仲睦まじいようで何よりだ。そう目を細めたはずが、チクリと胸の奥が痛んだ。
なぜ?今朝、変な物でも食べただろうか。この後、一世一代の大勝負が控えているのに、とつい眉を顰める。

「ナオナオは来るって?水穂なんか聞いてる?」

チクリ。もう一度同じ痛みを感じて、その原因に思い至る。
直だ。直に会えないからだ。
無性に声を聞きたくなった。なんでもいい。怒って拗ねてすぐに会話を終えられても構わない。

水穂は急いでバッグを漁り携帯電話を取り出した。もはや弟の問いに答える気などさらさらない。
潜菜も織江も、水穂のその性急な行動に驚きはすれど責めることはなかった。何を考えているのか分からないようで分かりやすい、それが走上水穂という男の人となりだからだ。

電話帳から彼女の名前をスクロールすることも、コール音を聞くことすらも、もどかしい。
出てくれ。出てくれ。出てくれ。
祈るような気持ちで携帯電話を握りしめる。

「水穂?」

やっと聞きたかった声に触れて、目頭がじわりとにじむ。
感極まったからだろうか。言おうとした言葉も喉元で引っかかって出てこない。

「何?わたし、怒ってるの」

ああ、やはり。
予想はしていたが、それでも想像と直接聞くのとではダメージが段違いだ。
いつかリオが言った言葉が脳裏をよぎる。
『このままじゃついに愛想尽かされて、果ては別れを切り出されるぞ』

「愛想尽かした?」
「うん」
「俺と別れたい?」
「……それもいいかもね!」

ブツッ。ツーツーツー。

「……直?」

無情にもそこで通話が途切れた。
明確な拒絶。
これは、要するに、彼女に別れを切り出された。そういうことなのだろうか。

なあ、水穂。お前はこのままで本当にいいのか?
何もしなければ、今度こそ彼女を手放すことになるぞ。
離れて行ってもいいのか? よくない。
まだ好きだろ? 大好きだ。
会いたいか? 会いたい。

会いたい。会いたい。
だったら、

「走れ」

ちょうどそのタイミングでバスがやって来たが、水穂が乗ることはなかった。
時間も迫っている。乗り遅れれば試合に棄権したことになる。この大会を逃せば代表に選出される可能性は限りなく0になる。
織江は幼馴染のそんな立場を案じて引き止めようとしたが、潜菜が首を振って彼女の腕を引いた。
「行かせてやって」
「でも、だって……」
「大事なものを守りに行くんだ。俺にはあいつの気持ちが痛いくらい分かるよ」



「直!!」

いつも待ち合わせで利用する駅の前で、愛しい人の姿を見つけた。

「うそ、なんでこんなところにいるの!?今日、選考会じゃ……」
目をまん丸にして、直は立ちすくんでいる。

「なんで知ってる?」
「そっれは、たまたま!たまたま聞いただけ!別に気になって調べたとか、そんなことないんだから!」
「そう」
水穂は肩で息をしながら、はやる気持ちを押さえて、一歩ずつしっかりと彼女との距離を縮めた。

伝えたいことがある。
できることならば手遅れでないことを祈った。

「俺に、愛してる?って聞いて」
「…………へ?」
「いいから」

逃げられないように直の華奢な腕を掴んだ。じっと見つめれば、彼女の頬がじわりじわりと赤く染まる。そんな様子も、やはりとても可愛いと思う。
自分じゃどうしようもないほど、すっかりこの子に惹かれているのだ。

「あいしてる…?」

「愛してる。」

直の瞳を逃さず捕えて、はっきりと告げた。

(ダメだ。言葉だけじゃ足りない。)
掴んだ腕を引き寄せて、溢れる想いのまま掻き抱いた。

「ちょっ、ここどこだと思って」
「知らない。好きだ。直が好きだ。」

縋るように、抱きしめる力を強めてゆく。
腕の中で抵抗していた彼女が途端静かになったから、水穂は苦しかったのだろうかと動揺した。
が、直後、杞憂であったと気付く。

「……ばか」
かき消えそうな、小さな小さな声であった。
だが、水穂にとってはそれだけで十分だった。

(なあ、リオ。
俺の背中に回されたこの手のひらを、『好き』という意味で捉えてもいいだろうか?)



「プールの塩素濃度が規定値を越えていたため大会延期。こんなことって奇跡でも起きなきゃありえないのよ!」
ぷうと頬を膨らます直の顔をじっと見つめる。
「ねえ、ちゃんとこの意味分かってるの?!」
「俺はツイてる。」
「違うわよ!水穂が大馬鹿ってことよ!!」

直の言葉通り、あの日大会は急きょ取り止め、後日に延期となった。もちろん、水穂は参加権を得たままだ。

いまだツンと唇を尖らせ拗ねながらも、直は水穂のシャツの裾をきゅっと握る。この仕草は構ってほしい時にするサインだと、最近やっと覚えた。

右手を差し出す。見上げる直がはにかみながらその手をとった。
人前で手をつなぐぐらいが、臆病な恋人を不安にさせないためにはちょうどいいのだ。
愛情表現は出し惜しみしないこと。水穂は自分の胸にしっかりと刻みつけた。







+++++++++++++++++++
【補足】
「別れたい?」「それもいいかもね!」の後に通話切れたのは実は事故です。電波悪かっただけ。
二週間電話しなかったのも直ちゃんのケータイが壊れたから、とかそんな理由だと思う。
水穂が危惧するほど深刻な事態じゃなかったんじゃないかなーと。
でも、このままちゃんと向き合ってなかったら仲直りできずにこじれっぱなしになったんじゃないかなーとも。





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