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それなりに長さのある文章置場兼描いたもの置き場。 よそ様のお子さんをお借りすることもあります。その時は親御さんの名前を明記いたします。
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こうてつプレート攻略におけるキーポイント―『博士の昔話』





それは世界が再生されてからまもなくのことです。

あるところに、とても臆病な技術者の男がおりました。
男はある日、道端に平べったい石板が落ちているのを見つけました。
「なんだろう?」
拾ってみると、石板とそれに触っている自分の手が光っているではありませんか。
男は石板がただならぬものだと直感しました。
「もしこれを捨てて天罰が下ったらどうしよう」
怯えた男は手放すこともできず、石板を持ったままビクビクと震えていました。

ある日男は思いつきました。
「そうだ、僕を守ってくれる用心棒を作ろう」
男は泥や土をかき集め、1体のゴーレムを作りました。
「こんな立派なゴーレムはめったなもんじゃないぞ」
男は自分で自分を褒め、『博士』と名乗るようになりました。

ひと所に居ては誰かに石板を横取りされてしまうかもしれない。
博士はゴーレムと旅に出ることにしました。

外の世界は落石や雪崩…危険に溢れています。
1体だけでは不安になった博士は、まず岩山を登りました。
そこで、意思を持つという宝石を使って人形を作りました。
「よしよし、よく出来ているぞ」
博士は一つ安心になりました。
次に博士は、ゴーレムと宝石の人形を連れて雪山を登りました。
そこで、魔力を秘めた雪の結晶を使って人形を作りました。
「これで怪物に襲われてもへっちゃらだ」
博士はも一つ安心になりました。

3体を従えた博士はもう何も怖くありません。
自分の身が危険になったら、3体の用心棒たちが守ってくれるのです。
落石に潰されそうになると、宝石の人形が岩石を投げ飛ばして助けてくれます。
雪崩に飲み込まれそうになると、氷の人形が雪を逸らして助けてくれます。

それなのに、安心していたはずの博士は怯えた顔をしていました。
用心棒たちの気持ちが分からないのです。彼らがもし自分のことを嫌っていたらどうしよう。
とてもとても不安で夜も眠れませんでした。

博士と用心棒たちは、旅の途中で魔女に出会いました。
魔女は博士たちを見て言いました。
「怖いんだろう?わたしならこの子たちに感情を与えることができるよ」
「本当かい?そうするにはどうしたらいい?」
親切な魔女は、博士の命半分と引き換えに用心棒たちに感情を与えてくれました。

博士の不安とは裏腹に、用心棒たちは皆、生み出してくれた博士のことが好きだと言いました。
博士は嬉しい気持ちでいっぱいでした。

それから、1人と3体はもっと遠くにまで旅をしました。
その旅が楽しければ楽しいほど博士の命は短くなっていたけれど、博士は気にしませんでした。

ある日、博士はあることに気付きました。
宝石の人形の投げた岩が、氷の人形の逸らした雪が、
村を、その村に暮らす人々を傷つけていたことに。
博士は取り返しようもない過ちに嘆きました。

そして、あの岩山で宝石の人形にこう言ったのです。
「ここに残って、ここに暮らすあらゆる生命をあらゆるものから守るように」
次に、あの雪山で氷の人形にこう言いました。
「あらゆる生命の成長を妨げぬよう、その身をもって守るように」

それぞれの場所に宝石の人形と氷の人形を残し、博士はゴーレムだけ連れて、故郷の町に戻ってきました。
町の様子は、博士が住んでいた頃と同じに見えました。
けれど、町の人たちはゴーレムの姿を見るなり家の中に引っ込んでしまうのです。
「ああ、気持ち悪い」「なんだあの化け物は」
博士は悲しい気持ちになりました。ゴーレムも悲しくなりました。

ところが明くる日、一人の少年が博士を訪ねてきたのです。
「そのゴーレムどうやって作ったの?まるで生きてるみたいだ。」
ゴーレムはこの少年を不思議に感じました。
なぜなら、博士が泣きながら笑っていたからです。
きっと少年がおかしなことを言ったからに違いない。
ゴーレムは少年をじっと見つめました。少年は歯を出して笑いました。
体の真ん中が暖かくなったような、こんな気持ちは初めてでした。

町に戻って来てから、博士は日に日に弱っていくようでした。
けれど、少年と一緒に物を作っている時だけは生き生きとして見えました。

3体の中では特に感情の乏しかったゴーレムでしたが、その頃には自分で物を考え、理解する力もありました。
ゴーレムはある日、博士の日記帳を見つけました。
そこには博士が魔女と出会った日のことも書かれていました。
『魔女の魔法で、私の命半分と引き換えに彼らに感情を与えることができた。』
ゴーレムは自分に感情が生まれた日のことを思い出しました。
日記はこう続けられています。
『彼らの感情が成長すればするほど、私の寿命は削られる。』
雷に打たれたような気持ちでした。
つまり、自分が人間らしい感情を持てば持つほど、博士を苦しめてしまうのです。

もしかすると、あの2体はこのことを知っていたのかもしれません。
だから詳しいことも聞かず、博士の言うとおりにしたのでしょう。少しでも博士の命を奪わないように。

その頃の博士は、一日中ベッドの上で寝ていました。
時折うわ言のように何かぶつぶつ言っていましたが、その言葉に意味がないことを知っていました。
生い先が短いことはゴーレムにも分かりました。

博士が元気だった頃、博士はゴーレムと少年にこう言っていました。
「これで時計を作って、そこからできたエネルギーを使って人の役に立ててほしい。
そして、これを君たち二人で守り続けてほしい」
少年は言われた通り、不思議な石板から時計を作りました。

博士がこと切れる寸前、ゴーレムは少年に頼みごとをしました。
「私の心臓を動かないように固定してほしい。
そうすれば、博士はきっと、最期の言葉を言い残せるようになるはずだから」
少年は首を横に振りました。何度も何度も「嫌だ」と言いました。
けれど、結局は縦にこくんと一つ、頷くことしかできませんでした。
心臓を固定すると、ゴーレムはぴくりとも動かなくなりました。

博士はゆっくりとまぶたを開いて、おぼろげな視界の中で3つの影を見ました。
ゴーレムと、宝石の人形と、氷の人形が、そこにいるように見えました。
けれど、実際には見た気がしただけです。
本当はただ一人、少年がいるだけでした。でも、そうだと分かりませんでした。
長い長い走馬灯の後、博士は涙をポロポロと零してぽつりと言いました。

「ずっと、そばに居てくれてありがとう」

カチコチ、カチコチ……
それから何回時計の針が鳴っても、博士は黙ったまんまでした。

少年は後ろを振り返って目を丸くしました。
ゴーレムの目の辺りが濡れていたのです。彼にはもう、感情はないはずなのに。
それはただの雨の滴だったけれど、少年は彼が泣いていたのだろうと信じています。
そのまま永い永い眠りについたゴーレムを、少年は毎日磨きました。

やがて、博士が残した石板を原動力に、機械の発展が始まりました。
それは技術者を呼び、また生み出し、一つの塔を築き上げたのです。


それが現在のこの町――。

 

博士の日記はこう続いている。

『魔女の魔法で、私の命半分と引き換えに彼らに感情を与えることができた。
 彼らの感情が成長すればするほど、私の寿命は削られる。
 しかし、私は自分の決断を間違いだと思っていない。後悔する日も来ないだろう。
 私は彼らから答えを聞いた。「私のことが好きだ、と」
 そのとき、自分の愚かさを恨めしく思った。彼らの好意を疑ったのだ。
 だがそれ以上に、ひとつの感情が私の胸を占めた。
 彼らに対する限りない慈愛。この身が朽ちようとも、私は彼らを愛し続ける。』

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