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それなりに長さのある文章置場兼描いたもの置き場。 よそ様のお子さんをお借りすることもあります。その時は親御さんの名前を明記いたします。
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壱屋さん宅有理先生をがっつりお借りしてクリスマス話!
真夏にこれ書いたバカとは私のことです…^^

いろいろあって有理先生の部屋に居られず別居→和解して息吹が戻って来る→それから数週間後
戻ってきてからは、息吹は有理先生のことが異性として好き。でも、ユウちゃんはどうなの…?と確信が持てない状態。
ってのを踏まえて。

長くなったので3つに分けることにしました。
神視点。

では追記より~



ソファにどかりと背を預け、テレビのリモコンを片手に、何を見るでもなく次々とチャンネルを切り替える。
音楽番組に、お笑い芸人のネタ披露、CM、CM……。

「どのチャンネルも特番ばっかだな」
「年末だからねぇ」

草臥のそんな呟きに素っ気なく返したのが、つい数週間前にこの部屋に戻って来たばかりの居候。
ちらりとそちらに視線を投げれば、彼女は何やら書きものをしている。
それが何なのかは、同じ職業に就いている草臥には聞かずとも明白で。
それだけに下手に茶化して要らぬ諍いを生むのはまっぴらご免だ、と
大して興味もないテレビへと視線を戻した。

『クリスマスフェアー 二日限りの冬物セール』

「クリスマスねぇ……」

この行事を忘れていたわけではない。
生徒たちが話しているのを耳にタコができそうなほど聞いたし、
教師生活の中で一時は街中に溢れるクリスマスソングがトラウマになったほどだ。
まるで時限爆弾。生徒たちは冬休みの到来と心躍らせるのだろうが、教師にとってはむしろ修羅場以外の何物でもなく……。
クラス担任から外れた今は幾分か気が楽だが、今自分の左斜め前で机にかじりつく彼女はまさにその御身分。
クリスマスを祝う余裕などどこにもないだろう。

それでも一応、聞いてみることにした。
自分と違って彼女は女だ。女はイベントの類を重要視しているようだし。
「なあ息吹。お前クリスマスイブどうすんの?」

すると息吹はぱっと頭をもたげ、体ごと草臥の方に向き直り答えた。
「ああ、それなんだけどね。わたし帰り遅くなるから。ご馳走とか何も用意できないんだけど…。
イブだしピザのデリバリーでいいよね?あ、別にお寿司でもいいんだけど」

(いや、そういう意味で聞いたんじゃねえんだけど……)
自分の想像以上に事務的な息吹の返しに、草臥は面食らう。
喧嘩売ってるの?と噛みつかれることも考慮したのだが。
(もっと残念がるもんじゃねえのか……?)
腑に落ちない思いを抱きつつも、面倒事を回避できたのは良いことだ、とそれ以上邪推するのはやめることにした。
キリスト教徒でない自分にはクリスマスにこれといった思い入れはない。
何もしないならその方が楽でいい。
結局のところ、この草臥という男は根っからの面倒臭がりなのだった。

 

そして、数日が経ち12月24日。

「10時か……」
息吹は眼鏡を外しながら、壁にかかる時計を振り仰いだ。
暖房をつける許可をもらったものの、それでも12月下旬の夜の空気は冷え込む。
手早い動作で、机に広がった書類やファイルを一つにまとめ鞄に仕舞う。
コートに袖を通し、今一度忘れ物がないかの確認。
綺麗に整頓された机上に問題はない。そのまま出入り口に向かい、職員室の電灯のスイッチを切った。

ちらりちらりと腕時計の針を数度視認する。
幸い、終電に乗り遅れる心配はない。息吹は白い息を吐きながら駅まで急いだ。
乗り込んだ車内で鞄の中に視線を落とし、ふふっと小さく笑みをこぼした。


扉を開けると、ペッパーの効いたピザの匂いが息吹の鼻をくすぐった。
ほっこりと温かな空気が肺を満たす。

「ユウちゃんごめんね。」
コートを脱ぎながら部屋を進んだが、居間にあるはずの人物の姿がない。

不思議そうに小首を傾げていると、思いがけず横から聞き慣れた声が。
「今からあっためっから。先に風呂でも入って来れば?」
そちらを振り向くと、ピザが数切れ載った皿をレンジに入れている丸い背中があった。

(言われずとも動いている……)
珍しいものを見た、と息吹は目を丸くして、しばらくの間興味深くその様子を観察していた。

「何見てんだよ」
すると草臥から不機嫌そうな抗議の声。
「いやぁ…あははは。じゃあお言葉に甘えてお風呂入って来るね。」
曖昧に笑いながらその場を誤魔化し、脱衣所へと小走りで向かった。

「あーそういや、俺が入った後だけど…まあ気にせずゆっくりしてけ」
背中にかけられた声に、息吹は「ええー」とわざとらしく不満げな声を返す。
しかしながら、彼女の声色から、実際には機嫌を損なっていないのは一目ならぬ一耳瞭然で。
草臥の唇は自然と三日月状に吊り上がった。そこに短い短い鼻歌も添えて。


湯船にゆっくり浸かったことで体はぽかぽかと温かい。
リビングのテーブルには湯気を立ち昇らせる熱々のピザ。トマトソースの匂いが食欲をそそる。
思えば昼食を食べたきり何も口にしていない。
胃が思い出したかのように、ギュルルルーと息吹の腹の虫を派手に鳴らした。

「息吹…お前なぁ…」
その音はソファの隣に腰掛ける彼にもばっちり届いていた。あからさまにため息をついてみせる草臥。
「えへへ。しょうがないじゃない、お腹空いてるんだもん」
「まあ、食えよ。ほら」
そう言うと、ピザの一切れを小皿に盛り、コトンと息吹の前に置いた。

息吹は糸を引くチーズの焦げた匂いに、思わずごくりを唾を飲み込む。
「じゃ、遠慮なく!いただきまーす!」
パシンと胸の前で両手を合わせると、まるで子供のようにはしゃいだ様子でピザにかぶりつく。

よく言えば微笑ましい、頬をいっぱいに膨らませたハムスターさながらの24歳独身女。
この光景を見て笑いを誘われずにいられようか。
「クッ」
草臥は込み上げる笑いを、膝を叩いて必死に堪えていた。


(隣の男が人を笑い者にしているのは見ずとも分かるわ)
息吹は眉根を寄せたが、それでも顎を動かすのをやめない。

「あのさ、息吹」
草臥はそういえば、と今は冷蔵庫の下に置いてある箱のことを思い出し、息吹の肩を叩いた。
「ふん?はに?」
だが、振り返った顔のマヌケなこと。草臥は耐える余裕すら与えられず瞬殺された。
「ぶふっ」

「ちょっ…ユウちゃん…」
うげぇと顔を顰めながら、頬に飛んできた唾を手の甲で拭う。

「お前、そりゃねえよ…無理だよ、勝てねえよ……」
草臥は苦しそうにヒッヒッと腹を抱えている。

息吹にとって草臥のそんな様子を見て気分がいいわけもなく、口の中のものを全て嚥下すると、のそりと立ち上がった。
右足を思いきり後ろへ振りかぶり、そして目前の膝目がけてその右足を振り下ろした。

「っっっ!!!」
弁慶を蹴られた草臥は声にならない悲鳴を上げた。

「私に言いたいことがあるんでしょ?早く言いなさいよ!」
膝を抱えて丸くなる草臥に、容赦なく息吹の怒気を含んだ追撃が加えられる。

「おっまえなあ…!!ここまですることねえだろうが!」
未だ弁慶の泣き所が痛むのか、草臥は涙目で訴える。

「悪いのはそっちじゃない。」
息吹は腕を組んだままふんっと顔を逸らした。

(かっわいくねえなぁ……)
草臥は心中で悪態をつく。それを声音にしなかったのは、これ以上話がこじれるのを避けたいがための性か。

今一番必要とされているのは彼女の機嫌を取り戻すことだ。そのためには何が必要か。
草臥は体を起こしながら、キッチンの奥を指さした。
「冷蔵庫の下」
「え?」
「ケーキあるから」
「うそ!?」
その一言に、息吹の顔がぱっと輝いた。
すぐさま背中を翻して目的の場所へと駆けて行く。

(なんつぅ変わり身の早さ……)
現金な彼女の様子に草臥がため息をついたのは言うまでもないだろう。


「まさかユウちゃんがケーキ買ってくるなんて思わなかったなぁ~」
そう上機嫌に箱からお目当ての物を引き出す息吹は満面の笑みだ。

先刻奇襲を食らったばかりとはいえ、彼女のこの顔を見られて悪い気はしない。
「駅の近くでたまたま、な」

「でもちょっとこれ大き過ぎない?」
「そうか?」
「私たち二人だけでしょ?これファミリーサイズはあるよ、どう見ても」
「お前が食えばいいじゃねえか。夏じゃねぇし腐んねえよ」
「何それ毎日食えってこと?太るよ、絶対太るよ。これからお餅が控えてるのに!」

そう言って息吹はキャンキャン騒いでいるが、草臥の目にはそれほどふくよかには映らない。
(腹は引っ込んでるし尻もそんな出てねえし。その割に胸はデケェけど)
と、相手が自分の視線に気付いていないのをいいことに、改めてジロジロと彼女の身体を吟味するのであった。



+++++++++
これだけでも十分長ったらしいですが、まだまだ有息のターンは続きます(…)

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