すると突然、息吹の肩が強く掴まれた。片手で頬を包まれ、上を向かされる。
「んぐっ」
視界が暗くなったかと思うと、すぐに全ての感覚が口内に持っていかれた。
唇を割られ、歯列をなぞるようにして熱を持った舌が侵入してくる。
唾液を貪られるかのように舌が絡め取られる。時折下唇を啄ばまれ、それが心地よい快感を与えた。
「んっ…ふぁっ」
心の準備もなく施された行為に、息吹は自然と熱に浮かされたように息が上がる。
やがて淫靡な糸を引いて草臥の唇が息吹のそれから離れた。
「ユ、ユウちゃ…ん…これ、ど、どどどういう……?」
息吹はひどく狼狽した様子で草臥に問いかけた。
その動揺の程は尋常ではなく、腰を抜かしたまま指一本も動かせない有様だ。
「どうって……俺が欲しいって言ったのはお前だろ。その返事しただけだし…?」
言いながら、草臥はゆっくりと息吹の体を倒していく。
そのあまりにも自然な動作に、息吹もうっかりされるがまま仰向けになってしまった。
「え、えええっと……待っ待って!!えっとあの、その、これって、私の片想いじゃない、の……?」
「は?」
思いもよらない彼女の発言に、草臥の口から気の抜けた声が出る。
「だから、ユウちゃんは私のこと妹のような存在としか見られなくて……
帰って来てもいいって受け入れてくれたのは、私が異性としてユウちゃんが好きなのを許してくれてるだけで……。
そ、そういうことじゃないの?」
涙目でたどたどしくそう説明され、草臥は軽い眩暈を覚えた。
勘違いもいいところだ。
人がどんな思いで迎えに行って、抱きしめてキスをしたと思ってるんだ。
「なんでそうなんだよ」
「だって、帰って来てからもユウちゃん全然そんな素振り見せないし…
なんかもう、こっちがドキドキするばっかりで、ユウちゃんはケロっとしてるし……」
今にも泣きそうな顔を草臥から逸らし、ところどころしゃくり上げながら言葉を紡ぐ。
そんな息吹の様子に頭を抱えながらも、草臥は穏やかな声を降らせた。
「俺も同じだよ。」
「?」
「お前のこと下心なしで見られない。」
「……!!」
息吹は目を見開くと、臙脂色の瞳をフルフルと潤ませた。
「………あ、それって、下心はあるけど恋人としての好きじゃないとかそんなんじゃ…」
「ない。俺をなんだと思ってんだ」
「そ、そうだよね……。……それって、自惚れてもいいの?」
「いいんじゃねーの?」
草臥はわざと意地悪に疑問符を疑問符で投げ返した。
彼女ならばそれに対してもうっと胸を突き返してくると思ったのだが……、
予想に反して、腕の檻に囲われた彼女の頬はぷっくりと膨れ、不機嫌の形。
理由が分からず小首を傾げていると、拗ねるような小さな声が草臥の耳に届いた。
「だったら……手出してくれたら良かったのに」
「はあ…?」
思わず瞬きをする。
(聞き捨てならないセリフじゃなかったか、今の)
草臥は息吹の発言を自分なりに解釈し、彼女の言葉の意味を確認した。
「お前…それ自分から襲ってくれって言ってるもんじゃねぇか?」
「そういうことだけど?」
拗ねたままの表情で、事も無げにさらっとそう言ってのける。
(こっの女……)
自分が今置かれている状況を分かっているのか。
惚れた男を前にしてのこの言動。明らかに誘っている。
(だったらお望み通りに致しましょうか、お姫様?)
草臥は自嘲的な笑みを顔に貼り付け、ギシリとソファを軋ませた。
左手は息吹の顔の横に突き出したまま、彼女の豊かな胸の膨らみをパジャマ越しに撫で上げた。
「やんっ」
甘い悲鳴を引き出せたのを良いことに、親指で乳首の付近を掠めながら撫でる力をさらに増していく。
「あふっ…待ってユウちゃん…あっ…そこダメっ…んっ、い、今からするなんて聞いてなっ…あんっ」
「お前が襲えって言ったからそうしてやってんだろ」
「べっつに今って意味じゃな…」
裾の下から手をくぐらせ、薄い布一枚隔てたそこにある乳房をぎゅっと鷲掴んだ。
「ひゃうんっ」
すると、ひと際高い嬌声が上がった。
「どうしてお前はそう犯罪的に鈍いときがあんだよ。俺が欲しいんだろ?余すことなくくれてやるよ」
草臥の声がいつになく低くくぐもっている。
(やば…地雷踏んだっぽい…)
息吹はサァッと顔を青くさせた。
声色だけではない。彼の発言が完全に“そういう意味”だというのは、いくら鈍いと評価された自分でも分かる。
彼との行為を望んでいないわけではないのだが、これが自分へのクリスマスプレゼントだと思うと、
あまりのはしたなさに情けなくなってくるわけで……。
「ああんっ」
太ももを這う彼の指の感触に堪らずゾクリとのけ反る背中。
それは、その事実を否定するどころか自らの卑猥な部分を証明するだけでしかなく。
(もう、ごちゃごちゃ考えるの疲れた……)
息吹はぎゅっと目を閉じると、押し寄せる快楽の波に己の身を委ねることに決めた。
溺れるならそれで構わない、と。
「息吹っ……!」
「はぁん…ユウちゃんっ…」
身に沁み入るような寒さの中、二人が熱い聖夜を過ごしたのかどうか。
それは、あえてここでは触れないことにしよう。
《オマケ》
「来年はきーっちり倍返ししてよね。」
「あー…言いにくいんだけどさ。実は用意してなかったわけじゃなく…」
「……は?え、嘘?わたしあんなにキレて当たっちゃったじゃない…!
っていうか、だったらこんなことになってないし…!!」
「なに不満?息吹ちゃんはまだ足りないの?」
「~~////ちっが…!!それはいいからプレゼント!あるなら見せてよ!」
「それなんだけどさ……あ~まあいいや。持ってくる」
(なんでそんな嫌そうなのよ……)
有理先生、プレゼントを持って戻る。
「はい」
「開けていい?」
「どうぞ」
ガサゴソ
「…………えっと、これは…パンツ?」
「そう見えんなら」
「なんでパンツ……」
「あーー…説明すると長くなるんだけど……つまりあれだ。事故だ。」
「ふーん……」
「だー!だからなかったことにしたかったんだよ!」
「百歩譲ってそういうことなら」
「恩に着ます…」
「それにしてもこれ、ずいぶん布面積少なくない?ユウちゃんこういうのが好きなの?」
「あーいや、そういうわけじゃなくてな……。まあ嫌いじゃねえけど、下着云々より着てる方の問題だろ?」
「……えーと、つまり?好きなの?」
「他はどーでもいいけど、好きなヤツが着てたら興奮する。」
「………あ。えっと…それは、あの……/////」
「息吹がいいってんならこれ受け取ってやってくれ」
「うっ…悔しい…パンツもらって照れて喜んでる自分が憎いいぃ……!!」ダンッダンッ
(結果オーライ、俺グッジョブ)
+++++++++
はい!!
寸止めするつもりが話の進行の都合上やってるところも入っちゃいました…^p^濡れ場がないから注意書きすればそれでいいかなって……
こういうネタがまた壱屋さんのお子さんで本当に申し訳ないです…エロネタ妄想しやすいんだm(黙れ)
長らくお付き合いくださりありがとうございましたー!!