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それなりに長さのある文章置場兼描いたもの置き場。 よそ様のお子さんをお借りすることもあります。その時は親御さんの名前を明記いたします。
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下の記事の続き。ですが、これはこれ単体で読めそうかな、と。
とうとうゲーム開始。
そしてこれが8月イベント話の最後。

ラプリエさん(@ゆたさん)をお借りしました。
あとクラリッサちゃん(@はじめさん)のお名前?も。Φ様、ヤミさんの存在もちらりと。
オリキャラというかうちのエアっ子(松蛆、雨蛙)が出張ってます。(解説は最後に)

口調等違うところなどありましたら申し訳ございません。

散々長々と書いてきましたが、完全に私の独走状態で許可も何もいただいていないです。
ですので、これはあくまで二次創作というか…もし良かったら生暖かい目で受け入れてくださるといいな、という感じです……。
勝手にすみませんでした!!!





騒がしかったホールが一瞬にして静まり返った。

「それじゃあ、今日のゲームを始めようか。」

ヤミさんがルール説明を行う。
勝ち残る条件は、地上に辿り着くこと。
この地下二階層と地上の間はロックされていて、解除するには鍵が必要。
各自に3つのキーが配布される。解除に必要な個数は5つ。
他プレイヤーとの戦闘に勝利して、鍵を5つ揃えなくてはならない。

 

午前零時。

ホールが消滅し、それぞれのプレイヤーたちは二の氷窟の各地に転移された。

僕はずっと考えていた。
このルールは、確実に脱落者を生み出す。
知り合いだって例外じゃない。

僕は手帳を取り出した。
能力を使用するために記録している似顔絵帳なのだが、
それがまるでアルバムのように思えた。

一ページ、また一ページとめくるたびに、その人との思い出がよみがえる。
誰一人だって死んじゃダメだ。脱落だって嫌だ。


必ず脱落者を生み出すこのゲーム。

僕がその候補になれば、プレイヤーを二人、救うことができるんじゃないか。


目の前に現れたのは――。

 

「吉宗さん!!どうして…なぜあんなことを!?」

珍しい。プリエさんが声を荒げている。

「どうして何もせずにキーを渡したんですか!?」

今手元にあるキーは1つ。これが誰かの手に渡れば、脱落だ。

「…………」
僕は答えない。ただ下を向いていた。
足元に影が差す。プリエさんが近づく気配がする。

「教えてください。話してください。吉宗さんの考えを知りたい。」

僕は顔を上げた。プリエさんがハッと息を呑んだのが分かった。
プリエさんの不器用な手がそっと頬を拭った。
僕の安っぽい涙は外気で半分凍っていた。


「プリエさん、言ったよね?いつか吉宗さんの昔の話も聞かせてくださいねって」
「ええ、覚えています。」

僕とプリエさんはなるべく人目につかない物陰に隠れて、話を始めた。

「命の重さってあると思う?」
「…………生命は皆等しく平等だと思いますが。」

何を突然って思っただろうな。自分でも思う。脈絡ないなって。
でも、聞いてほしい。

「そっか……そうだよね、動物も虫も人間もみんな生きてるんだよね。」
「……吉宗さんも、その一人でしょう?」

僕は首を振った。
「ううん。俺は生きてないよ。死んでもいないし、死なないのかもしれない。」

「……それは…どういうことですか」

「俺さ、ちょっとプリエさんと似てるんだ。俺も望まれて生まれたから。」

プリエさんは相変わらず険しい顔をしている。
僕は今どんな顔をしているんだろう。こんな時はどんな顔をするように設定されているんだろう。

「だけど全然違うんだ。俺って最初からこうだから。
プリエさんと話したこともしたことも笑ったことも怒ったことも泣いたことも、
全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部っ!!!!作り物だ!!!」

気付いたら肩で息をしていた。
すると、強く手を握られた。

「吉宗さん、分かりません。ちゃんと話してください。」

今度は僕がハッとする番だった。プリエさんの澄んだ目が潤んでいた。


僕はぽつりぽつりと話し出した。
現実世界に存在しないこと。キャラクタープログラムだということ。
行動の全ては“設定”に基づくということ。今こうしていることもきっと例外ではないこと。

「きっと?」
「自覚ないんだ。俺は俺につけられた設定知らないから。」
「……吉宗さんの感情は吉宗さんだけのものなんですよね?」
「えっと……」
「何も変わりません。ここにいる吉宗さんは一人しかいません。」
「プリエさん……」

それって、どういう意味?
僕はプログラムだからコピーはいくらでも作れる。
だけどここではそれは不可能で、だから一人。

でもそれは皆同じだ。みんな唯一無二の存在。
父親がいて母親がいて、その母親がお腹を痛めて生んだ子。
成長して、やがて人格が形成されて、その人を取り囲む環境が個性を生む。
人生の上にその人がいる。
だから、尊い命、だ。

だから、僕の命は塵より軽い。

「プリエさん、」

「かーぎちょーうだいっ」

「「!!!」」

全く気付かなかった。
相手が気配を絶っていたのか、それとも単に警戒心がおろそかになっていたのか。
目の前には帽子を被った学ランの男。ギラギラと光る双眸が闇の中で一際目立つ。

相手の悠長な声音からも、こちらの劣勢は明らかだ。
あっという間に距離を詰められる。首に手をかけられ、鼻先に鎌をつきつけられた。
身動きを取ろうと後退すれば、「おっと動いたら、分かるな?」と鎌が揺らされた。

横目でプリエさんの様子を窺うと、先ほどまですぐ横にいたはずなのに数メートル離れたところにいる。
なぜ?こいつ何かしたのか?
拘束されているようには見えないが、自由に動ける状態でもないようだ。

「俺も平和的にいきてーんでね、大人しくしてれば鍵だけで見逃してやるよ。」
軽薄そうな男だ。その言葉を鵜呑みにするのは危険だと感じた。
しかし、この状況を打開する策がない。今助かる道は、相手の指示に従うこと。

「鍵を渡せば、何もしないんだな?」
「ああ」
男はニヤリと笑った。
僕は上着のポケットを探る。

「吉宗さん!!」

プリエさんの声が響いた。
無理もない。言いたいことは分かる。

これが、最後のキーだ。

「吉宗さん!!いけません、それは……!」

「プリエさんは黙ってて!!これは俺が決めたことだから」

「ご託はいいからさっさと出せや」
「ぐっ」
首を掴む力が強まる。やば…苦し…

鍵を持つ左手が震える。力が入らない。
カツン。
耳の奥で何かが落下する音。

「さっさとそうすりゃいいんだよ」

がくんと体が後方に倒れる。続いて側頭部に衝撃が走った。直後に鈍い痛み。

「吉宗さん!!!」

プリエさんの声。
頭がぼんやりする。耳鳴り。目がチカチカする。極彩色の光が点滅する。
気持ち悪い。吐き気がする。
痛い。痛い。寒い。痛い。痛い痛い痛い

(ああ、そうか。さっき頭を蹴られたんだ。)

まるで他人事のように、そんな言葉がふっと脳をよぎった。

すると突然、ブオン―と風を切る音。

そのすぐ後に、耳をつんざくような、何かが破壊される音が続いた。

這いずって音の方を見ると、コンクリートの壁が砂煙を上げながらボロボロと崩れている。
すぐ近くにはプリエさんの姿。

「ざっけんなよデカブツクソがああああああ!!!!」
男の怒声。
「先にテメェをブッ殺してやる!!」

デカブツ?テメェ?
プリエさんが危ない。
この壁、プリエさんが?助けてくれた?

「カエルフォローだ。次ヘマしたら焼き殺す。」
男の視線の先には液体のような半透明の……カエル?がいた。
それがプリエさんの周りにフヨフヨと浮いている。
あれがヤツの召喚獣なのか?

「死に晒せや気色わりぃデカアマがああああ」

そうだ、プリエさんが危ない。プリエさんを助けないと。

「!!」
プリエさんがこちらを見ていた。
視線が合うとただ目を細めて、頷いただけ。でも僕にはそれで十分だった。


もしかしたら、プリエさんも僕もこいつらに殺されてしまうのかもしれない。
もしかしたら、これで全部全部終わりなのかもしれない。
プリエさんを無事に故郷に帰してあげたかったけど、できないかもしれない。

『未来は今のその先にある。』

大事なのは、今、何ができるか。


今、僕にできることは?


ひどい砂煙だ。いや、砂嵐なのか?
視界が悪い。重い物が倒れるような鈍い音が止まない。それに加えて打撃音もする。

首を振った。
大丈夫。彼女を信じるんだ。

僕にできることは――。


不鮮明な視界の中で、それでも僕は懸命に筆を動かした。
僕にできることはこれしかない。

だから、だから、どうか、

間に合って!!!


「リベラ!!!」


砂嵐の中に、真っ白な光が降り立った。

 

氷の銃弾が雨のように辺りを撃ち抜いてゆく。

「なっ!!!なんだよこの女!?」

それ以上、男が何かしゃべることはなくて、倒れたんだということが分かった。

 

事態が収束したのを確認して、慌ててプリエさんのもとまで駆け付ける。
「プリエさん!!」

「吉宗さん……あれは、クラリッサ…さん?」

プリエさんの右腕は外れ、皮膚のところどころがはがれ落ちていた。
やはり傷は浅くなかったようだ。

「うん。氷が弱点みたいだから、リサちゃんがピッタリでしょ?」
「そうですね。」
プリエさんは微笑んだ。

僕は、こみ上げてくるこの溺れそうな感覚を…涙を、意地で飲み込んだ。

「プリエさん、ごめん。ケガさせちゃって……」
「いいんですよ。すぐに治りますから。」
一拍置いて、プリエさんは続けた。
「吉宗さんが無事で、良かった。」


僕の命は塵のように軽い。今でもそう思う。
僕がデータで、やっぱり人間とはどうやったって異なる存在で、だから結ばれることはないこと。
ここでなら、仮想世界でならそれが可能だとしても、きっと神様は許さないんだろう。

「僕は、プリエさんと一緒にいたい。」

「私も同じ気持ちです。吉宗さんと共に生きたい。」

それでたとえ誰かの願いを奪うことになったとしても、
僕はまだ、プリエさんと一緒にいたい。


この手を強く握ってくれれば、強くなれる。前に進める。

だからもう少しだけ、僕の我がままに付き合ってください。

 




 


 +++++++++++

komono.png
話にでてきた主従。
吉宗と同じ境遇だけど、結局最後までお互いそれを知りませんでした。
吉宗に殺されたわけじゃないけど、今回のゲームで死亡脱落。

 

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